デザイナーが描いた「街にはあったら幸せになるお店」
西東京市/西武柳沢駅|ヤギサワベース
ヤギサワベースという駄菓子屋のはなし
街にはあったほうが幸せになるお店、というのをいくつか勝手に想像していて、それが「本屋」「文房具屋」「駄菓子屋」だった。駄菓子屋は平成になってから8割以上が街角から姿を消したという国の調査結果もある。これはもちろん駄菓子屋として商売が成り立ちにくいことが理由なのだと思う。引っ越しの多い家に育ったが、常に家の近くには「駄菓子屋」があり、将来は駄菓子屋をやりたいなぁ、なんてぼんやり考えていた。
今から14年ほど前に、職場の先輩と一緒に新宿区にグラフィクデザインの会社を立ち上げた。職場でも分業化が進み、インターネットの発展もあり、クライアントと直接会うことも少なくなったこともあり、都心のメリットもそれほど感じなくなってきていた。自分の生活環境の変化や、震災で帰宅難民になったりとさまざまなことがあり「地元を離れずに仕事ができたら」と考えるようになった。先輩と話し合い、自分が住んでいる場所の近くに事務所を作ることを許してもらった。
「でもただのデザイン事務所では面白くない。なにか自分を表現できる方法はないかな?」と考えた結果、将来のぼんやりとした夢であった、駄菓子屋とドッキングすることを考えた。この方法ならば、商売として成り立ちにくい駄菓子屋も存続することが可能かもしれないし、自分も表現できると考えた。思い立ったら吉日。すぐに店舗を探し始めた。そしてシャッター街になりつつあった柳沢北口商店街の外れで、もと豆腐屋だった空き店舗を見つけた。2週間後には契約していた。
店内では様々なイベントが開催され、老若男女問わず人が集まる。街の駄菓子屋さんは、今やこのエリアに住む人々のコミュニテースペースに。
駄菓子屋オープンから3年が経とうとしている。新しくできた駄菓子屋は好意的受け止めていただけたようで、最近では他エリアからもお客さんがやってくるようになった。デザイン業の方も、近隣の方を含め、新しい仕事をいただけるようになって、経営も安定してきた。店に来てくれる子供たちが親になって一緒に店に来てくれる日まで、頑張っていきたいと思う。